今年10月に行われる「第30回JA全国大会」にむけて、これから各地で組織協議案の討議が行われる。その際に最も重要なことは、これまでの「農協自己改革」を批判的に総括し、真に協同組合らしい農協運営と運動を取り戻すことである。
しかし、組織協議案は「本冊」と「別冊」に分け、その一部には「JAグループ組織内限り」と記載されている。そこに一人ひとりの農家組合員は含まれるのか、「組合員と共に」という主体は誰か疑問である。組合員の拡大にむけて「価値観を共有する仲間づくり」を掲げるのであれば、「外向き」と「内向き」の議論を区分けせず、再生産可能な農業政策実現に理解を広げるためにオープンな議論が必要である。
そもそも、2012年に行われた第26回JA全国大会では、広域合併、支店統廃合、低収益事業切り捨てなどの「リストラ型の経営」は限界だとして、「事業伸長型経営」への切り替えや「支店拠点主義」を打ち出した。これは、日本の「コストカット型の経済」の矛盾を見通す極めて重要な指摘であった。
ところが、2013年からの安倍政権による「農協改革」の下で、財界・官邸からの攻撃に屈し、小規模農家を淘汰する農業の構造政策と、野放図な輸入自由化を退けることができなかった。そして、一度は「限界」としたはずの合併・統廃合を、今日まで「自己改革」の名の下で再び進めることとなった。
その結果、農協は「限界を超えた」悪循環に陥り、農家組合員の農協ばなれや、職員の中途退職が止まらない事態となっている。今回の組織協議案でも、「合理化による収支改善には限界」があるとしながら、営農関連施設を含む拠点の集約化や、手数料水準の見直しなど、さらなる「合理化」を描いている。これでは、将来を見通せない。
また、「食料・農業・農村基本法」が改定される下で、消費者の関心と不安に対して農協の基本姿勢をどう打ち出すかも鋭く問われている。農協系統は、改定農基法に「JAグループの要請内容が概ね反映された」とし、組織協議案でも農業関連団体が「農業・農村振興に重要な役割を果たしていることが明記され」たと自画自賛している。しかし、農政の本質を見ればさらなる縮小的再編を余儀なくされるのが現実である。こうした情勢認識は前回大会よりも後退していると言わざるを得ない。
いま、既存の政策の「充実」だけでは現状を打開することは到底できない。重点とした価格政策についても、物財費の価格転嫁だけではなく、農家組合員の実態を踏まえ、担い手不足の根本問題となっている生産者の所得の問題について強く訴えるべきである。そして、農業・農村の現実を踏まえた正確な政策要求を打ち出し、そこで果たす農協の本来的な役割について明らかにするべきである。
私たちは、農家組合員の営農とくらしを守り、農協労働者が展望を持って働き続けられる組織を実現するために、積極的かつ開かれた第30回JA全国大会組織協議案の討議を行うよう求める。
2024年7月14日 全農協労連第126回定期大会
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