「全農協労連・選挙に臨む方針」 2024年10月19日 第811回中央執行委員会・決定
1.はじめに
8月14日、岸田前首相が自民党総裁選への不出馬を表明し、政治情勢はマスコミ報道を含め、いっきに総裁選がクローズアップされました。この自民党総裁選には過去最高の9人が立候補し、9月27日の決選投票を経て、石破茂氏が新総裁となり、石破氏は内閣総理大臣指名の前に、10月9日衆議院を解散し、10月27日投開票を表明し、10月15日公示で総選挙が行われることとなりました。
こうした情勢変化とともに、これまで私たち全農協労連が堅持する労働組合の原則に基づき、要求の実現をめざすため選挙戦に臨みます。
また、会・経営者や管理職による職制・職務権限を利用し、且つ、農政運動と称し系統組織内候補者や特定政党の選挙活動への強要・動員、労働者の権利である年次有給休暇を強制的に取得させ選挙活動に動員・協力させるなど、職場から違法な選挙活動の一掃をめざします。
2.労働組合の原則に基づき、要求の実現をめざす
私たち全農協労連は、一人ひとりの労組員が、自らの思想・信条に基づいた政党支持や選挙活動・後援会活動の自由を完全に保障するとともに、これまでの国政選挙における方針と同様、労働組合としての原則を守り、特定の政党や候補者を支持することはしません。
何より労働組合は、思想・信条や政党支持の違いを超えて、要求に団結し、力を合わせる組織です。私たちが掲げる要求の実現に向けて共闘し、要求を前進させる政党や候補者をしっかり見極め、学習を通じて政治情勢をつかみ、仲間同士で政治的関心を高めていきます。
そして、要求実現に向けて「みんなで選挙へ行こう」を合言葉に取り組んでいきます。
3.選挙運動に対する取り組みの具体策
(1)農業政策、労働政策など政治のあり方が、地域農業をはじめ、私たちの暮らしと仕事に大きな影響をもたらします。労働組合が選挙を取り組む目的は、労組員自身が選挙に対する関心や政治的意識を高め、主権者としての大切な一票をしっかりと行使するためです。
国民的課題や争点など、私たちの切実な要求に照らし、選挙の意義や争点を明らかにします。
(2)労組員自らの思想・信条に基づいた、政党支持や選挙活動・後援会活動の自由を完全に保障します。そして、労働組合組織として、特定政党や候補者を支持し、労組員にこれを義務付けることは行いません。
あらためて、日本国憲法が定める思想・信条の自由を順守するとともに、思想信条や政党支持の違いを超えて、要求で力を合わせる労働組合としての原則を堅持します。
(3)職場の労働者に対し、会・経営者や管理職による職制・職務権限を利用した選挙活動への強要・動員などは、憲法が保障する基本的人権、思想および良心の自由を侵し、さらに業務外の事項を指揮命令することは、労働契約上においても違反する行為です。仲間の苦難に寄り添い職場で行われている違法な選挙活動に反対します。
そのためにも、各単組・支部分会執行委員会をはじめ職場の仲間とともに、労働組合の原則を意思統一し、職場の実態をつかみ、要求を掲げ解消をめざします。
(4)職場における選挙活動の多くは、形式的にボランティア(有給休暇の取得指示や強制取得)による候補者の応援活動(電話での支持拡大やポスター張りなど)などに駆り出されていますが、これがあたかも業務命令のように扱われているのが実態です。
また、上司などからの選挙運動への協力に対し、断ることで業務を通じた仕返し(実績に対する叱責・追及、制裁、あるいは専門部会との関係悪化など)への危惧・不安を抱える仲間も少なくありません。
選挙活動への協力・動員の強制・強要は、人員不足と過重な働き方を余儀なくされる仲間をより疲弊させ、職場環境を悪化させかねません。
仲間の苦難と怒りにどうこたえていくのか。労働組合の原則に照らし、組織的な対策が求められています。
(5)選挙運動と政治活動
政治活動とは、広い意味で「選挙運動」の一部とされており、そのため公職選挙法は、選挙運動と政治活動を理論的に明確に区別・定義付けしています。
【選挙運動】特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること。
【政治活動】政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
それぞれの職場の「農政活動」と称した実態に照らし、協力の名の下で行われる動員・強制の一掃をめざします。何より、私たちの職場で活用されている就業規則(服務規律)では、「許可なく組合の施設内で、政治活動など、業務に関係のない活動をしないこと」などと規定し、また、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の範囲を超えた言動により「精神的・身体的な苦痛を与えるなど職場環境を悪化させる行為(パワーハラスメントなど)を禁止する規定も定められています。
勤務時間内において選挙運動がまかり通ってしまえば「職場の秩序」は保たれるわけがありません。経営者に対し、職場の実態を伝え、職務に専念することなど改善を求めましょう。
4.情勢課題をみんなでつかもう
2024年秋期年末闘争・具体策で明らかにしたように、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻を背景に、世界の国々は食料をはじめ様々な原材料の輸出を規制し、国内では食品価格が軒並み高騰しています。
さらに気候変動による異常気象の頻発、栄養不足人口の増加など、いま世界的な食料不安・危機が深刻化する中、国内の食料生産を担う家族農業者への所得補償を求めるなど、持続可能な地域農業の支える運動が大きく広がっています。こうした情勢と私たちが掲げる地域農業・家族農業を守り・支える農政の転換を求め、農政課題を一大争点へ押し上げていきます。
また、労働法制をめぐっても政府・財界が一体となって、「最低基準を下回る労使合意を尊重すべき」などの暴論を持ち出しながら、労働者保護を目的とした労働基準法の改悪を狙い、さらに労働組合の役割さえ奪おうとしています。
産別一体、そして国民春闘共闘に結集する仲間とともに、すべての労働条件の一方的変更を許さず、労働組合との協議合意の原則を守る運動がこれまで以上に重要となっています。2024年秋期年末闘争をはじめ、それぞれの職場でたたかいを積み重ねながら、政府・財界一体の労働法制・改悪をはね返していきます。
暮らしをめぐっても、政府は「改正/子ども・子育て支援法」の財源確保を口実に、あらたに公的医療保険の上乗せ、社会保障の歳出削減、雇用保険料などの見直しなどによる国民負担増を押し付けようとしています。とくに社会保障の歳出削減は、介護利用料の2割負担の層を拡大することや、2028年度までに医療・介護の3割負担層の拡大、ケアプランの有料化など制度改悪が狙われています。
その一方、政府は、2027年度までの5年間で43兆円(国内総生産GDP比2.0%)の防衛費を確保するなど、社会保障削減・切り捨てと国民負担増を強いながら、防衛費を拡大しているのが実態です。
安心して暮らせる社会、持続可能な社会が実現できる政治への転換を求める国民要求を掲げ、選挙戦の争点に押し上げていきます。
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